研究実績の概要 |
昨年度終わりから行っていた数論的関数の平均値のWalfisz型誤差項評価の研究についてプレプリントを公表した. 特に, Vinogradov型の組合せ論的分解を改良し用いることで, H.-Q. LiuによるEuler totient関数に対する結果を拡張することができた. 関連して, あるクラスのtotient関数の平均値について, Max Planck Institute for MathematicsのPieter Moree氏, Alisa Sedunova氏とJohannes Kepler University of LinzのSumaia Saad Eddin氏との共同研究を行い, 円分多項式の種々の特殊値の平均値の計算に成功した. オーストリア滞在中には別テーマではあるがSumaia Saad Eddin氏との「条件付きの素数2つの積」に関する研究も大枠の進展を見た. また新たなテーマとして, 弘前大学の立谷洋平氏とBaggio Engineering SchoolのDaniel Duverney 氏と整除性に関連したLambert 級数の無理数性について共同研究を始めた. Lambert級数は約数関数に類する数論的関数を含むべき級数へ変形することができる. ここにErdosが用いた無理性判定のための手法を用いるのだが, この際数論的関数の局所的な振る舞いをコントロールする必要がある. このような数論的関数の局所的振る舞いは難しいので, 残念ながら素数列に渡るLambert級数は取り扱えないが, 素数よりもう少し疎な2項ずつ互いに素な数列に渡るLambert級数を簡単な篩法を用いてコントロールすることに成功した. 現在までに得られている結果を用いれば, 例えば素数の2乗番目のFibonacci数の逆数和は無理数であることがわかる.
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