研究課題
特別研究員奨励費
LCAO法によるDFT計算では、quick iterative法またはsemi-analytic法を用いて電極の自己エネルギーを計算することが一般的である。しかし、実空間差分法では、ハミルトニアンのサイズはLCAO法のものと比べて圧倒的に大きいため、これらの方法を適用することは困難であった。そこで、本研究では、まず、空間分割法を応用することで、実空間ハミルトニアンを等価な縮約されたハミルトニアンに変換し、縮約ハミルトニアンに対してquick iterative法を大きな変更を伴わずに適用できることを示した。さらに、自由電子の縮約ハミルトニアンのブロック非対角要素が伝導方向に孤立境界を課した場合のHelmholtz方程式の解であることに着目して、特異値分解による低ランク近似を行い、電極の自己エネルギーの計算コストの削減を行った。数値実験として、Auの単原子鎖モデルを用いて、縮約ハミルトニアンのブロック非対角要素の特異値分布、低ランク近似を行った場合の自己エネルギーの精度を検証した。計算結果から、以下の2つの知見が得られた。(1)特異値は極めて早く0に近づくことが確認された。これは、自己エネルギーは少数の一般化ブロッホ関数で張られる部分空間で表現でき、低ランク近似を行うことで大幅な計算コストの削減が可能であることを示唆している。(2)低ランク近似の閾値を十分小さく取った場合、低ランク近似を行わない場合よりも自己エネルギーの精度が良いことが分かった。特異値分解を行うことで、逆行列計算の数値誤差に相当する特異値成分が取り除かれたためだと考えられる。また、低ランク近似の閾値と、低ランク近似を行った際に得られる固有値の最大・最小値が一対一対応していることから、縮約ハミルトニアンのブロック非対角要素の特異値・特異ベクトルと減衰モードの度合いの間に強い相関があることが分かった。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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