研究実績の概要 |
伊藤正樹特別研究員(以下、研究員とする)は目的である「モータータンパク質の自己集合能を基盤とするMOF複合体集積法の構築」に係る技術の確立を目指し、日夜研究に励んでいた。研究員は、エネルギーを消費しながら運動するマイクロメートルサイズのモータータンパク質系の集積方法を多数検討し、生体分子モーター系に気液界面を接近させるという極めて簡便な操作を用いることで、特異的な相互作用なしにモータータンパク質系の集積体が形成される条件を見出した。形成された集積体は時間の経過とともに形状を変化させ、局所的に一見すると不定形のようにも思われるが全体としては秩序だった構造をとり、非平衡系における定常状態を創出することに成功した。また形成された集積体は振動・崩壊・成長・分裂の4種の運動モードを相互に行き来することを明らかとし、動的に形態変化する集積体の構築に成功した。本研究成果は多様な集積体作製に不可欠な構造制御方法を見出したものであり、モータータンパク質系の新たな自己集合様式を見出したという観点からも評価できる。 この一年間で研究員が確立したモータータンパク質の新規な集積方法は、研究課題である複合体の集積手法の基礎となる重要な知見であるとともに、単独でも十分な学術的価値を持つものと考えられる。本研究成果は国内外における研究発表と推敲を経て、学術論文一報(RSC Advances., 2016, 6, 69149.)として公表している。
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