研究課題
特別研究員奨励費
分子中の電子が原子核の束縛から開放されたいわゆる連続状態および共鳴状態にあるような分子運動に対する理論計算手法の確立を目的として研究を進めた。共鳴状態にある分子の運動には電子と原子核の運動学的な相互作用(いわゆる非断熱相互作用)と原子核の量子性が重要であることがわかってきたので、本年度は原子核の量子性と非断熱性を含めた分子ダイナミクスの計算を行った。また、分子ダイナミクスの計算を行いながら電子連続状態の空間的な分布(微分断面積)を計算する手法としてフラックスを導入した。計算には広く用いられている量子化学計算プログラムであるgamessを改造することで行った。微分断面積の計算までは至らなかったが、回避交差領域でフラックスが特異的な振る舞いをすることを見出した。フラックスは電子あるいは原子核の確率密度に対する流れ場であり、原子核の移動や分岐・電子移動反応を定量的に記述する。回避交差を原子核波束が通過すると、複数のポテンシャル曲面に核波束が分岐していく。今回の計算では原子核波束が分岐し始めてから完全に相互作用がなくなるまでの非常に短い時間において、電子フラックスが非常に短い周期で時間振動することと原子核の位置に対して空間振動することを見出した。この新規に発見された現象はこれまで曖昧な議論がなされてきた量子力学的なデコヒーレンスに対する新しい解釈を与える新しい解釈を与えるものであり、実験的な観測を含めて今後の研究の大きな足がかりになる。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (4件)
Journal of Computational Chemistry
巻: 38 号: 23 ページ: 2030-2040
10.1002/jcc.24848
巻: 38 号: 12 ページ: 910-925
10.1002/jcc.24766