研究課題
特別研究員奨励費
平成28年度は、分子雲コアでの化学進化を確立するとともに、星形成の初期条件を調べるための観測を行った。化学的に進化しているが星形成活動が行われていない分子雲コアTUKH122に対し、野辺山45m 電波望遠鏡を用い、NH3での一点観測を行った。NH3の分子輝線を解析することで、その物理状態を詳細に調べた。その結果、運動温度 ~11 Kで線幅 ~ 0.3 km/sであることがわかった。さらに熱的な運動成分が卓越しているTUKH122のメイン成分だけでなく、乱流が非常に卓越している成分も同時に検出した。分子雲コアが星形成を始める要因として乱流の散逸が示唆されているが(e.g., Ohashi et al. 2014, Aso et al. 2000)、どのように乱流が散逸するかは明確ではない。今回の結果から、乱流のショックによって乱流成分が急激に減少する可能性を示した。さらにメインの分子雲コアは熱的運動が卓越していることから、星形成の初期状態は非常に静的であることを示唆する。続いて、化学進化が進み、原始星が誕生している領域、G14.225-0.506、に対してALMAによる好感度、高解像度の観測を行った。この領域は大質量原始星がまだ存在せず、今後形成されることが示唆されている(e.g., Povich et al. 2010)。ALMAで分子雲コアを調べたところ、大質量分子雲コアも存在しないことがわかった。この結果から、大質量星や星団を形成するためには、分子雲コアへのまわりのガスの降着が重要であることを示唆する結果が得られた。
2: おおむね順調に進展している
分子雲コアが星形成を始める初期条件を明らかにすることが、本研究において重要となるが、その有力な候補をすでに同定し、論文として発表している。またALMAでの観測提案も採択されており、データも揃いはじめ、研究は概ね順調に進んでいると言える。
ALMAの観測によって分子雲コアの物理状態を詳細に調べることができる。このデータの解析から分子雲コアの密度構造、速度勾配を明らかにし、星形成の初期条件を明らかにする予定である。
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すべて 国際共同研究 (4件) 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 6件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 7件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件)
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