研究実績の概要 |
本研究の目的は、光学顕微鏡観察下にて金属イオン溶液に還元反応を起こす紫外レーザーと、光熱酸化を誘起する近赤外レーザーを同時照射することで単分散なナノ粒子を作製することである。紫外レーザーの照射のみでも金属ナノ構造の作製は可能であるが、制御性に困難がある。高強度の近赤外レーザー照射は、光熱変換によって局所的な温度上昇を引き起こすためナノ構造を酸化溶解させるか、もしくは溶液中に制御された熱対流を駆動するので、局所反応制御に新たな自由度を与える。2種類のレーザーの強度比を変化させることで、局所反応場における酸化・還元反応の比率および対流を制御し、単分散なナノ粒子を作製する方法を確立する。 本年度ではまず、対流の制御法の検討および金属イオンの光還元における反応機構の解明の2点に取り組んだ。一般的に、局所的な温度勾配に誘起されるのは浮力に駆動される自然対流だが、金属ナノ粒子に高強度な近赤外レーザーを照射するとナノスケールのバブルが形成することがあるため、表面張力の寄与するマランゴニ対流も反応制御に利用できる。本年度の前半は光熱変換に誘起されるナノ・マイクロスケールの対流について種々の実験と数値シミュレーションを行い、自然対流とマランゴニ対流の寄与の割合を解明することで、決定的な対流の制御パラメーターを見出した(Nanoscale, 2017, 9, 719)。他方で溶液中の金属イオンに紫外-可視光を照射した際の光還元反応の機構には未解明な点が多く、ナノ構造作製の方法論を確立する上での大きな問題となることが想定された。そこで本年度の後半では、還元に用いるレーザーの波長・強度などを変数として実験を行ったところ、光還元の反応機構をほぼ特定することに成功した。こちらについては現在論文投稿中である。
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