研究課題
特別研究員奨励費
ジャンガリアンハムスター(以下、ジャンガリアン)とロボロフスキーハムスター(以下、ロボロフスキー)は同じヒメキヌゲネズミ属であり、ジャンガリアンは大人しいという特徴を示す一方で、ロボロフスキーは多動性を示す。本研究では、同属である2種類のハムスターを用いて多動性のメカニズムの解明を目指し、栄養学的アプローチにより緩和されるか否かについて検討を行った。これまでの研究により、ロボロフスキーの脳内でL-セリン含量が低かったことから、これが行動量の差異を生じさせているのではないかと仮説を立てた。L-セリンはセリンラセマーゼと呼ばれる酵素によりD-セリンへと変換される。この酵素の発現の違いについて検討を行うために、in situ hybridization法を用いてセリンラセマーゼの脳内遺伝子発現量および発現分布について分析を行った。その結果、両ハムスターのセリンラセマーゼ遺伝子発現量および脳内分布については有意な差は認められなかった。つまり、ロボロフスキーにおけるL-セリン含量の低さは、セリンラセマーゼの働きによる差ではなく基質が低いことが原因であることが判明した。また、両ハムスターのエネルギー代謝の差異に関する試験の呼吸商の結果から、ロボロフスキーにおいては暗期開始数時間前からエネルギーの基質を脂質に切り替えることが判明した。このことからも、L-セリンの基質であるグルコースが低下していることが考えられた。さらに、妊娠期および授乳期にセリンを給与する群、授乳期からセリン給与に切り替える群、妊娠期にセリン給与し授乳期で通常食に切り替える群および妊娠期授乳期ともに給与しない群に分け、仔の多動性が改善されるか否かについて検討を行った。その結果、セリンを給与した母親の仔において多動性を抑制するまでには至らなかったものの、常同行動の一つである旋回行動を抑える効果があることが明らかとなった。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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