研究課題
特別研究員奨励費
磁気抵抗効果は記録媒体や磁気センサにも用いられている、スピントロニクスにおける最も重要な効果の一つである。単一素材において磁気構造の違いのみで実現可能な磁壁磁気抵抗効果は応用上有利であると期待されるものの、通常は厚い磁壁や乱れによって磁気抵抗比が小さくなる事が課題である。本研究ではまず、強磁性Weylセミメタルにおいて発現し得る、磁壁の厚みや乱れによらず巨大な磁気抵抗比を示す特殊な磁壁磁気抵抗効果の詳しい性質を調べた。特に転送行列法を用いた詳細な数値計算により、この効果が厚い磁壁や、磁性不純物に対しても安定であることを明らかにした。また、ヘリシティ不整合による磁気抵抗とフェルミ面のずれによる磁気抵抗の効果を分離することに成功し、この効果が系のトポロジカルな性質を反映したものである事を明確にした。次に、カゴメ格子系における伝導度を再帰Green関数法を用いて調べ、磁化の向きにより伝導特性が大きく異なることを明らかにした。磁壁構造を導入することで乱れや磁壁の厚みに対し安定な大きな磁気抵抗比が得られるが、その符号がNeel型とhead-to-head型の磁壁で反転することを発見した。さらに、非磁性のトポロジカル量子系である量子スピンHall絶縁体、及びトポロジカルDiracセミメタルの側面に強磁性電極を接続することで、通常は磁性トポロジカル量子系で見られる量子化されたHall伝導度、すなわち量子異常Hall効果が発現することを示した。この効果は系のサイズが大きいほど変化率が大きくなり、また乱れに対しても安定である。この現象は、トポロジカル物質そのものの組成を変えずに接続する電極の偏極率のみで制御することができる。本研究で得られたトポロジカル量子系特有の磁気抵抗効果に関する知見は、トポロジカル・スピントロニクスの発展に大きく寄与すると期待される。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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