研究課題/領域番号 |
16J02094
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
研究分野 |
感性情報学
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
EVANS BENJAMIN LUKE 北海道大学, 北海道大学大学院情報科学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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研究課題ステータス |
採択後辞退 (2017年度)
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配分額 *注記 |
1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2017年度: 600千円 (直接経費: 600千円)
2016年度: 400千円 (直接経費: 400千円)
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キーワード | 音楽理論 / ヒューリスティックルールベース / 遷移確率モデル / ヒューマン・エージェント・インタラクション |
研究実績の概要 |
音楽学知識を実装した新たな作曲アルゴリズムの構築にむけて、本年度はポピュラー音楽のヒューリスティックルールベースの構築を行った。ルールベースは有限状態の遷移確率モデルとして実装され、和音列の生成に加え、旋律の生成も行う。音楽学的質の向上とユーザによる印象の高い評価の共同達成に向け、ユーザ実験を行う予定である。 リスナーの印象を抽出した楽曲評価機構の検討について、本年度はリスナーの楽曲理解度の定量的評価を試みた。リスナーが耳にする音楽は階層的に様々な部分に分割可能(曲全体、フレーズ構造、旋律組織、コード進行、和音の重なり、単音の連続、など)である。リスナーが一般に「楽曲に対して持った」という印象が、楽曲のどの階層部分に起因するかは明確ではない。そこで本研究では音楽を一度物理現象レベルまで分解し、各階層における「音楽」に対するユーザの理解を調査している。 また、自動作曲システムに反映させる作曲者意図の体系化について、本年度は新たなモデルの提案を試みた。本研究では、ヒューマン・エージェント・インタラクションの研究分野で提案及び利用されてきたモデルを応用し、作曲システムとリスナーの関係を表現する新たなモデルとして利用することを提案した。提案モデルにおいては、作曲システムを「エージェント」として見立て、リスナーをエージェントが影響する「環境」と見立てる。モデルにおいて、自動作曲システムは生成する音楽によってリスナーを影響し、音楽聴取によってリスナーが受けた印象反応が作曲システムにフィードバックされる。ヒューマン・エージェント・インタラクション研究においてエージェントは環境の変化によって評価すべきとされているが、これは本モデルに適用されると、作曲システムはリスナーの聴取反応によって評価されるべきことを表す。現在は自動作曲システム研究における本モデルの総合的な有用性を検証中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度は多面的に研究題目に取り組み、自動作曲システムの開発をさらに深化させた。特に、新しくポピュラー音楽のヒューリスティックルールベースの構築を行うとともに、リスナーの楽曲理解度を定量的に評価する手法の確立を目指した。これらの研究成果は学術論文および国内学会において公表されている。 さらに、本研究課題における新たな取り組みとして、他の研究分野であるヒューマン・エージェント・インタラクションにおいて提案されてきたモデルを応用し、作曲システムとリスナーの関係をモデル化した。この研究成果も、国際会議において発表されている。これらの事由により、本研究課題に対する進捗状況は当初の計画以上に進展したと判断し、上記の評価を行うものである。
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今後の研究の推進方策 |
今後はまず、構築したポピュラー音楽のヒューリスティックルールベースシステムを用いたユーザ実験を行う予定である。ヒューリスティックルールの応用的利用により、音楽的質が良いと同時に、ユーザによる高い印象評価を受けるシステム構築を目指す。 また引き続き、リスナーの印象形成に起因する音楽の要素の特定するために、音楽を階層的に分割したうえでのユーザ理解の調査を行う。ミクロな物理現象表現からメタな楽曲表現に徐々に音楽の提示を変更していく中で、その楽曲に対するユーザの捉え方や理解度の変化を調査する。 作曲者意図の体系化について、今後は本研究で提案したモデルの実際的な利用と検証を計画している。従来研究の成果を本提案モデルの枠組みにおいて再検証し、その検証から得られた知見を改めて本研究で構築している自動作曲システムに適用することによって、作曲者の意図を反映させた作曲機構の実現を試みる。
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