研究課題
特別研究員奨励費
静岡県大谷崩一の沢流域において,土石流と降雨の観測,ドローンによる地形測量を行った。昨年度の成果から、土砂流出量推定に扇状地での土石流の動態を考慮する必要があると考え、調査・観測範囲を下流部の土石流扇状地まで拡大した。地形測量とインターバル撮影を組み合わせることで,発生・流下した土石流の多くが扇状地の上流部で停止するものの,土石流の継続時間が長い場合に,扇状地で幅10 m・深さ3 m以上の侵食が生じることが明らかになった。つまり、流下する土石流の規模に応じて、扇状地からの土砂流出量が大きく変化する。次に、昨年度行った土石流扇状地に関する水路実験結果の解析を進めた。これにより平均粒径が等しい均一粒径土石流と混合粒径土石流では、流下中の波形および流速にはほとんど差がないことが分かった。しかしながら、氾濫初期の土石流先頭部の到達距離は、均一粒径では約3 mであるのに対し、混合粒径では約2.2 mと両者で明確な違いが生じた。これは、混合粒径土石流では、流れの先頭部に大きな礫が集積することで、流れの抵抗が増加するためだと考えられた。これによって、混合粒径では扇状地下流部がより厚くなり、不飽和領域が形成されることで、後続の土石流の流下方向が変化し、左右非対称な扇状地が形成された。以上の知見を踏まえ、観測で得られた扇状地での土石流の侵食・堆積プロセスの再現数値シミュレーションを行った。しかし、調査で得られたような扇状地の侵食や、実験で見られた流下方向の変化を再現することはできなかった。そのため、実測した土砂流出量の数値シミュレーションによる推定精度は低かった。これは、従来の数値シミュレーションでは、扇状地を含む堆積層内部の水分条件の変化を考慮できないためだと考えられた。そのため、今後水分条件の変化を再現可能な計算手法を開発することで土砂流出量精度を向上できると考えられる。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 2件)
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