本研究の目的は、特定の刺激と特定の反応頻度(以下、特定の刺激―反応頻度)に関する学習(随伴性学習)が、刺激反応適合性課題(例:サイモン課題)におけるブロックレベルの適合性効果の変動(Proportion Congruency効果、以下PC効果)に関与していることを示すことである。 2017年度は、3つの実験から、特定の刺激―反応頻度がフランカー課題(実験4、5)、および単純な刺激―反応課題(実験6)の遂行成績(反応時間や誤答率)に与える影響を検討した。 実験課題はいずれもパソコンの画面に呈示される刺激の色(赤色/緑色、白色/灰色)に対応した手(例:赤色:左手、緑色:右手)で、できるだけ速く、できるだけ正確な反応を行うことだった。実験4は、左右手の反応頻度を同等にし、刺激呈示位置のPCをPC90/PC10視野とPC50/PC50視野に操作した。実験の結果、フランカー効果は刺激呈示位置のPC(PC50)を反映し、刺激呈示位置のPCに依拠した大きさとなり、PC効果がみられた。実験5では、実験4の実験設定に特定の刺激―反応頻度の偏りを加え、左右手に反応頻度の差がある事態の検討を実施した。その結果、実験5では実験4よりも大きいPC効果がみられ、フランカー課題では刺激呈示位置に依拠した視覚的注意の制御と特定の刺激―反応頻度による遂行成績の変化の双方がPC効果に寄与することが示され、今年度の目標は達成された。 また実験6では、画面中央に表示される刺激色の弁別課題で、特定の刺激―反応頻度に偏りがある事態で遂行成績の変化がみられることが確認された。これは、特定の刺激―反応頻度による遂行成績の変化は競合の解消を必要としない事態でもみられることを示唆し、特定の刺激―反応頻度による遂行成績の変化は、刺激に対し反応を行う課題全般に見られる現象であることが示された。
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