研究課題
特別研究員奨励費
申請者は、独自に合成した光反応性ユビキノン(PUQ-3)を用いてコレラ菌由来のNa+-NQRに対する光親和性標識実験を行った。その結果、Na+-NQRを構成する6個のサブユニットのうち、NqrAサブユニットが特異的に標識され、”solvent-accessible cavity”と呼ばれる洞窟様の空間を構成するLeu32-Met39あるいはPhe131-Lys138の領域にユビキノン結合部位が存在することが明らかになった。一方、Na+-NQRの阻害剤としては、オーラシン類縁体のHQNOが報告されているが、その阻害活性はμMオーダーとさほど強くない。そこで、所属研究室が保有するオーラシン類のライブラリーについてスクリーニングを進め、HQNOの1000倍の阻害活性を示す化合物オーラシンD-42 (AD-42)を見出した。次に、AD-42を鋳型としてキノロン骨格、あるいは側鎖末端に光反応性基(アジド基)を導入した[125I]PAD-1と[125I]PAD-2をそれぞれ合成し、コレラ菌Na+-NQRに対する光親和性標識実験を行った。その結果、[125I]PAD-1と[125I]PAD-2は、NqrBサブユニットのN末端領域のArg43-Lys54とTrp23-Gly89をそれぞれ特異的に標識した。2014年に報告されたコレラ菌Na+-NQRの結晶構造に基づくと、ユビキノン結合部位とキノンへの電子供与体であるリボフラビンの距離は約40Åも離れており、両サブユニットの大きな構造変化を前提としない限り、RBFとユビキノンの間で電子伝達は起こり得ない。阻害剤の結合部位は、NqrAを細胞膜に固定しているNqrBのN末端領域にあったことから、阻害剤はユビキノンに対して拮抗的に作用するのではなく、N末端領域の予想される構造変化を“くさび”としてはたらいて阻害していることが示唆された。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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Biochemistry
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