研究実績の概要 |
H28年度に、Af10ホモ変異胚の顔面正中の融合不全が鼻の原基(鼻隆起)内の神経堤細胞の増殖低下が一因であることが分かったが、Af10-Dot1L複合体が直接制御する遺伝子と、顔面正中の融合不全の原因となる神経堤細胞以外の組織に関しては不明であった。これをうけ、H29年度に以下の2点について解析し、論文(Ogoh H., et al., Scientific Reports, 2017)にした。 (1)Af10-Dot1l複合体がAP2α遺伝子の発現制御を直接行っているかを調べるため、胎生10.5日目のAf10ホモ変異胚の鼻隆起を含む組織を用いてクロマチン免疫沈降を行った。その結果、Af10ホモ変異胚のAP2α遺伝子のプロモーター、エンハンサー、コーディング領域でH3K79メチル化の著しい減少が確認された。(2)胎生12.5日目のAf10ホモ変異胚の前脳の神経上皮で細胞増殖が増加していることから、神経前駆細胞の増殖異常が示唆された。胎生12.5日目のAf10ホモ変異胚の前脳では、両側の内側基底核隆起間の幅が広がり、内側基底核隆起と外側基底核隆起の境界が曖昧となっていた。この表現型は、頭部が外側へ拡がる表現型(ハイパーテルリズム)を示すマウスモデルで見られる。このことから、Af10ホモ変異胚では前脳の神経上皮にある神経前駆細胞の増殖異常により、ハイパーテロリズムを生じ、顔面正中の融合不全の一因なっている可能性が示唆された。以上の内容から以下の論部を投稿し、採択された。 Mllt10 knockout mouse model reveal critical role of Af10-dependent H3K79 methylation in midfacial development. Ogoh H., et al., Sci Rep. 2017
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