研究課題
特別研究員奨励費
本年度は,電子の反粒子である陽電子と,陽子の反粒子である反陽子の両方が関与する,反水素原子過程について研究を進めた.近年の反水素を用いた基礎物理学研究で注目されている以下の二つの四粒子系に注目し,昨年度までの共鳴状態に関する研究を発展させた.(1)反水素原子と水素原子の共鳴分子状態:この系は,核間の運動と軽粒子(電子・陽電子)の運動が密接に関係する,非断熱性の大きい新奇な系として着目し,研究を続けてきた.本年度は,昨年度までに開発したコードを用いて,解離しきい値近傍での共鳴的分子形成を研究した.大規模な複素固有値問題を解くことにより,反水素原子と水素原子の解離しきい値下に共鳴状態が存在することを見出した.異なる基底関数を用いた複数の計算を比較することにより,分子状態の寿命・エネルギー位置が,組み替え解離の角運動量成分に対して収束に向かうことを示した.共鳴状態の束縛状態近似での波動関数を相関関数から分析することにより,この共鳴状態が主として分子型の構造であることや,反陽子・陽子間の粒子分布に断熱近似で予言できない構造が現れることが明らかになった.(2)ポジトロニウムと反水素原子の反応:この反応により反水素イオンを生成する過程が素粒子実験の立場から興味を集めている.反水素イオンの合成は,反物質を能動的に冷却する道を拓くので,精密実験に適している.本年度は,反水素イオンの生成過程と競合するポジトロニウムの励起過程を取り入れ,共鳴散乱計算を進めた.本研究により,反水素イオンに電子が一時的に結合した構造を持つ共鳴状態の解離過程に関する情報が初めて得られ,解離によってポジトロニウムの基底状態が優先的に放出される新奇な性質が明らかになった.また,大きな粒子組み替えを伴う反水素イオン生成断面積をS波衝突においてすべての競合過程を含めて計算できるようになり,全反応解析に向けて大きく前進した.
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 2件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 4件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (26件) (うち国際学会 10件、 招待講演 1件)
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