今年度は、研究課題の一環として、インドネシアのバンダアチェ市とアメリカのニューオーリンズ市のケーススタディに取り組んだ。 具体的なプロセスとしては、第一に、インド洋津波の被災地バンダアチェ市において、政府機関・国際機関・NGOらによる住宅供給がどのようにコーディネートされ、地理的に展開したのかを明らかにするため、ジャカルタ市・バンダアチェ市で現地調査を実施し、政府機関やNGOなどの住宅供給方法とその実態に関するデータ収集を行った。第二に、ハリケーン・カトリーナの被災地ニューオーリンズ市において、住宅再建支援として実施された民間・NGOとの「パートナーシップ」事業の地理的分布について明らかにするため、政府機関から入手済みの支援事業データを地理情報と合わせて分析し、事業ごとの地理的分布特性について把握した。 結果として、民間・NGO・国際機関の主体特性、事業自体の特性に応じて事業の地理的展開に特徴がある事を明らかにし、その要因を考察する事ができた。バンダアチェ市では、沿岸漁村に早くからNGOが支援に入り、その後郊外部の供給スケールの大きい地域で国際機関が支援を実施していた。ニューオーリンズ市では、市場価値の高いエリアでの実施が多い事業、人種混合で中所得者が多い地区への集中的な投資が特徴的な事業、高齢者や低所得者をターゲットとし低所得エリアでの実施が多い事業など、各事業の分布がエリアの社会経済的特性により明快に分かれていた。また、被害が大きく市場価値の低いエリアが必ずしも支援されているわけでは無く、むしろ取り残された場所として様々にNGOが入る場所となっている事など、昨年度実施したLower 9th Wardの支援状況とも繋がる結果を明らかにする事が出来た。
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