研究課題
特別研究員奨励費
本研究は、カイラルp波超伝導体の単一渦のダイナミクスについて準古典理論を用いて調べることにある。Hall効果には渦の帯電効果が重要と考えられるが、通常の準古典理論では常に粒子正孔対称性が存在するために、それを記述することができない。本年度は、渦の帯電効果を準古典理論で扱うことを目標とした。具体的には平衡状態の記述に便利な松原形式で準古典理論に粒子正孔非対称性を取り入れた拡張準古典理論の数値解析をした。Bogoliubov-de Gennes方程式により、平行渦は帯電し、反平行渦はほとんど帯電しないことが知られているが、まずこれらについて再現することに成功した。この傾向は低温に行くほど顕著である。渦電荷はクーパー対の全角運動量Lzに比例した主要項をもち、Lz=0である反平行渦はこれにより著しく抑えられる。一方でLz=2の平行渦とs波超伝導の渦(Lz=1)の帯電は二倍の関係にはなく、Lz=2ではペアポテンシャルが誘起成分を持つことで、原点での傾きが急峻になり、この結果全体でs波超伝導渦よりも一桁程度巨大な電荷を持つことを明らかにした。また渦電荷に対する不純物効果についてもs波とカイラルp波について調べた。結果、渦内束縛状態の散乱よりも、超伝導ギャップに対する不純物効果の違いがs波超伝導とカイラルp波超伝導の間で顕著であり、不純物が多くなると、一桁程度大きかった電荷はs波より小さくなることがわかった。これらはHall角の大小などに対して重要な影響を持つと考えらえる。準古典理論で得られた渦電荷の妥当性を調べるために、渦から十分離れたところでの力の釣り合いや局所状態密度の計算も行なった。力の釣り合いは、全領域、非平衡系での力の釣り合いを計算する土台になり、局所状態密度の計算では、準古典パラメタに対する摂動展開の妥当性はかなり制限されていることがわかった。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2018 2017 2016
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (14件) (うち国際学会 4件)
Journal of Physics: Conference Series
巻: 969 ページ: 012054-012054
10.1088/1742-6596/969/1/012054
Nature Materials
巻: 16 号: 11 ページ: 1106-1111
10.1038/nmat5007
Phys. Rev. B
巻: 95 号: 2
10.1103/physrevb.95.024418
Journal of Physical Society of Japan
巻: 85 号: 7 ページ: 074710-074716
10.7566/jpsj.85.074710
