研究実績の概要 |
本研究は、光障害によって生じる障害葉緑体の選択的除去を担う葉緑体オートファジー「クロロファジー」の、品質管理機構としての重要性とその制御機構を明らかにすることを目的としている。これまでに、光障害により膨張した異常な形態を示す葉緑体が選択的に除去されることを明らかにしてきた。さらに、膨張の主要因として、葉緑体包膜の損傷により葉緑体内と細胞質のバランスに異常が生じている可能性が考えられたため、包膜の修復や維持に関わる遺伝子が欠損した変異体において、クロロファジーの誘導頻度が変化するかどうかを調べた。包膜の修復に関わる遺伝子の機能低下株では、膨張した葉緑体の頻度は増加し、クロロファジーが活性化した。一方で、その遺伝子の機能強化株では葉緑体の膨張およびクロロファジーの誘導が抑制された。つまり、クロロファジーの誘導には、葉緑体包膜のダメージが関与していることが示された。これら成果を、米国植物生理学会誌Plant Physiology (インパクトファクター2017=5.949) 7月号に発表することが出来 (Nakamura et al., 2018, Plant Physiol)、International Symposium on Photosynthesis and Chloroplast Biogenesis 2018 (2018年11月) でのポスター発表では、Best Poster Awardを受賞することが出来た。 さらに、異常葉緑体を認識するレセプタータンパク質を同定するため、クロロファジー機能欠損変異体のスクリーニングを行った。約10,000個体の観察から、8系統のクロロファジー特異的欠損変異体の候補株を単離し、次世代シーケンサーによるゲノムリシーケンスを実施した。得られたシーケンス情報を基に、クロロファジー関連遺伝子の候補の絞り込むことが出来た。
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