研究課題
特別研究員奨励費
本研究は、海洋生態系と陸上生態系間を移動する海鳥によって汚染物質の輸送が行われていることを検証することを目的とする。海洋生態系の高次捕食者である海鳥類は、高濃度に汚染物質を蓄積していることで知られている。そして、体内に蓄積した汚染物質を繁殖行動(自身と子への餌獲得のために餌場である海域と繁殖地を往復する)や渡り行動(繁殖地~越冬海域の長距離移動)を通じて海域から陸上へ輸送している。海鳥は特に移動性が高く、長距離輸送をしている可能性が指摘されているが、これに関する知見や情報が乏しいため、どの海域からどの経路で汚染物質が陸上に持ち込まれているかはよくわかっていない。2018年度は5月末から6月上旬にかけては北海道天売島のウトウ営巣区内で野外調査を実施した。越冬海域と越冬中の行動パターンを調べるため、前年度までに装着したデータロガー(小型位置記録計)を回収し、新規にデータロガーの装着を行なった。また、繁殖中のウトウの汚染物質濃度と安定同位体比を調べるため、血液と羽を採取し、化学分析を実施した。さらに、糞を採取し、同化学分析を実施した。化学分析およびジオロケーターデータの解析は予定通り順調に勧められた。その結果、利用した越冬海域と組織中の汚染物質濃度にある程度の相関は見られたが、行動パターンはこれに関連しないことがわかった。
2: おおむね順調に進展している
今年度までの結果から、「海鳥が汚染物質を繁殖地に輸送し陸上植物はこれを取り込んでいること」、「海鳥の汚染物質輸送経路」を明らかにすることができた。
今後は、本研究による発見の普遍性を確かめるため、海域が異なる調査地および研究対象種を拡大して検証する。
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Environmental Toxicology and Chemistry
巻: 38 号: 1 ページ: 106-114
10.1002/etc.4286
Marine Ecology-Progress Series
巻: In Press
Ecological Application