研究課題
特別研究員奨励費
当初の目的は、ナノチューブ構造を持つチタン酸化化合物(TiNT、H2Ti3O7, 層状チタン酸化合物)を光触媒として応用することであったが、金属担持の代わりにイオン交換サイトを利用してニッケルやパラジウムなどの金属種を挿入した場合には、アルコール酸化反応をほとんど進行せず金属無添加TiNTの光触媒活性と同等もしくはそれ未満であった。イオン交換サイトに金属種を挿入し可視光応答化などを検討する予定であったが、イオン交換後はチューブ本体の構造がゆがむためか、逆効果になった。新しい光触媒反応の検討では、ジオールからの脱水素的ラクトン(環状エステル)生成反応に成功し、特にベンゼンジメタノールからフタリドを得る反応では、高選択的に進行した(選択率・収率ともに90%)。本反応では白金添加ルチル型TiO2光触媒が最適であった。金属を添加しないTiO2光触媒では反応は進行せず、反応を効率よく進行させるために金属種の添加は必須であると考えられたが、一部の光触媒的有機反応に観察されたような、金属種による触媒作用は見られなかった。直鎖アルカンジオールやシクロヘキサンジメタノールからのラクトン生成反応においても、白金添加ルチル型TiO2によって高収率に反応が進行した。これらの反応に白金添加TiNTを単独で適用するとラクトンの生成量はわずかであり、光触媒として有機反応に利用するには不適切であると考えられた。そこで、TiNTを酸触媒として利用することを考え実験を行った。TiNT(金属添加なし)と白金添加TiO2を物理混合して反応に適用すると、フタリドの生成速度は向上し、白金添加TiO2単独で得られる収量と比較しておよそ2倍となった。TiNTを光触媒および酸触媒の両機能を持った触媒として応用することはできなかったものの、酸を光触媒反応の補助剤として組み合わせた反応系には成功した。
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
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Catalysis Science & Technology
巻: - 号: 12 ページ: 2457-2466
10.1039/c7cy00365j