研究実績の概要 |
昨年度に引き続き蛋白質の異常凝集の初期段階を研究し,その基礎研究をもとに3本の筆頭著者論文を発表した.第一の論文はプリオンタンパク質の異常凝集の核形成過程を調べたもので,スキャニング変異導入法とφ値解析を用いることで,ヘリックス2領域が異常凝集の初期核となっていることを明らかにしたものである(Ryo Honda and Kazuo Kuwata, FASEB J, in press).第二の論文はプリオンタンパク質の異常凝集におけるジスルフィド結合の役割を調べ,ジスルフィド結合の切断は,異常凝集体の熱的安定性を下げる一方で凝集前駆体状態の安定性を上げ,その結果抑制因子と促進因子が共同的に作用することで異常凝集を促進することを明らかにしたものである(Ryo Honda, Biophy J, 2018).第三の論文はアミロイドベータとプリオンタンパクの共凝集に関する研究であり,アミロイドベータが生理的条件に近い蛋白質濃度(数百nmol/L)でプリオン蛋白質の異常凝集を促進することを明らかにしたものである.さらに,アミロイドベータはプリオンタンパク質に限らず、その他の蛋白質でも同様に異常凝集を促進することを明らかにした.この結果は,アミロイドベータが蛋白質の異常凝集に広く関与していることを示唆するものであり,重要な生理学的意義をもつものと思われる(Ryo Honda, Angewandte Chemie, in press).
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