研究課題
特別研究員奨励費
前年度の研究で、分光学的手法により、PECはLiイオンとの間で強固な配位構造を形成しにくく、イオンが凝集体として存在しているにもかかわらず伝導性を有していることから、PEC電解質は高塩濃度領域で高いイオン伝導度やLiイオン輸率を示すことが示唆された。そこで本年度は、塩濃度の違いがPEC電解質の電気化学的特性に及ぼす影響を解析・考察した。さまざまな塩濃度のPEC/LiFSI電解質を用い、SUS板を作用電極としてリニアスイープボルタンメトリーを行ったところ、高塩濃度領域では電解質の酸化分解による電流が大きく抑制され、室温付近で約5 V vs. Li/Li+以上に及ぶ優れた電気化学的安定性を示すことがわかった。さらに、Al箔を作用電極としてサイクリックボルタンメトリーを行ったところ、高塩濃度領域では電圧印加時におけるAlの溶解による腐食反応が抑制されることが示唆された。前年度に行ったFT-IRスペクトル測定によると、高塩濃度領域([Li]/[ECユニット] > 0.5)では、大部分(>70%)のカルボニル基(C=O)がLiイオンに配位していると予想される。高塩濃度化による耐酸化性の向上は、作用電極表面上に多量のイオンが存在することや、PECの耐酸化性がLiイオンへの配位による電子密度の低下により向上していることに起因すると考えられる。また、金属腐食反応の抑制は、多くの極性基(C=O)がLiイオンに配位していることで電解質全体のドナー性が低下し、金属イオンを溶出させにくくなっているためであると考えられる。以上の結果を受け、実際にコイン型の試作Li二次電池を作製し、充放電試験を行った。その結果、マンガン酸リチウム(LiMn2O4)のような、一般的なポリエーテル電解質では難しい4 V以上での充電が必要な正極活物質を用いた電池でも、高いクーロン効率での充放電を行うことができた。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 4件)
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