研究課題
特別研究員奨励費
本研究は、古生代末の大量絶滅事変からの回復期に相当する中生代初期(前期三畳紀; 2.52~2.47億年前)に堆積した遠洋域深海堆積物が保持する、当時の超海洋パンサラッサ(古太平洋)の環境変動を解読することを目的とした。日本には前期三畳紀に堆積した遠洋域深海堆積岩が存在しており、有機物の濃集と珪質成分の枯渇が認められていた。これらは、海洋無酸素事変による有機物分解の抑制と珪質骨格を持つ放散虫の生産減少に起因するとされていた。しかし、有機物の保存度や生物源シリカの埋没フラックスに関する定量的な議論が乏しかったため、この解釈は不確実であった。本研究は、前期三畳紀を網羅するほぼ連続的な層序記録を復元することで、有機物や生物源シリカの埋没フラックスについて初めて定量的に検討した。日本全国に点在する8地点から得た層序データと、測定した堆積岩の主要元素組成、有機炭素含有量をもとに、前期三畳紀の遠洋域深海底における大陸起源砕屑物、生物源シリカ、有機炭素の埋没フラックスを算出した。その結果、前期三畳紀には中生代の典型的な時期と比較して砕屑物が7倍以上、生物源シリカが2倍以上、有機物が数百から数千倍の埋没フラックスで堆積していたことを明らかにした。砕屑物埋没フラックスの増加は陸域の乾燥化を、生物源シリカ埋没フラックスの増加は陸域のケイ酸塩風化の増加を示唆する。有機物埋没フラックスの増加は、砕屑物と生物源シリカの埋没フラックス増加により埋没効率が高まったことに加え、底層水無酸素化と陸からの栄養塩供給の増加が原因となって起きたと推定される。これは、底生生物の活動度が低いことや、生物源シリカ埋没フラックスが陸域風化の強化を示唆していることと整合的である。前期三畳紀に起きていた陸域風化の強化と陸域の乾燥化は、世界の他地域の地質記録から推定されている当時の極端な温暖化に起因すると考えることができる。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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地質調査研究報告
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Palaeogeography, Palaeoclimatology, Palaeoecology
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