研究実績の概要 |
本研究課題は、現代論理学の一分野であるゲンツェン的証明論を用いて、ブラウワーによる知識論・言語論を発展させ、知識および言語を巡る数理哲学上の問題にアプローチすることである。最終年度となる本年度は次の研究(1a),(1b),(2),(3)を行なった。 (1)ゲンツェン的証明論についての更なる探究: (1a)ゲンツェンによる無矛盾性証明の拡張となる解析学の無矛盾性証明のために、竹内外史により導入された順序図形(ordinal diagrams)について、項書換え(term rewriting)の観点から研究を行なった。本研究は慶應義塾大学文学部教授・岡田光弘氏との共同研究で進められた。 (1b)ゲンツェン的証明論の先駆的理論であるヒルベルトのε計算を精査した。特に、アッカーマンによるε計算を用いた算術の無矛盾性証明、および、G・ミンツによるその現代的発展形を詳しく調べた。 (2)ゲンツェン的証明論からブラウワーの知識論・言語論へ:ゲンツェン的証明論とブラウワーの知識論・言語論を結びつけるために、2階直観主義命題論理に対して、ゲンツェン的証明論に基づく意味論である証明論的意味論(proof-theoretic semantics)を構築した。本研究は日本大学商学部准教授・竹村亮氏との共同研究で進められた。 (3)ゲンツェン的証明論によるブラウワーの知識論・言語論の展開:まず、ゲンツェン的な枠組みの中で定式化される局在論理(local logic)を扱うバーワイズおよびセリグマンによるチャンネル理論(channel theory)に着目した。そして、受入研究者である戸田山和久教授との議論を通して、証明行為が担う情報をチャンネル理論でもって表現し、エージェントの認識状態に対してきめの細かい分析を与えるブラウワー的知識モデル・言語モデルを構成するというアイデアが得られた。
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