2017年度の研究計画では第一に、2016年度の研究に引き続いて陰陽道及びその関連分野(天文道・暦道)における術数の展開を追うことを予定していた。この点について、2016年度は古代から中世にかけての変遷を追ったが、2017年度は近世にまで視野を広げて研究を行った。その結果、古代以来密接に結びついていた天文占や暦注などのいわゆる「迷信」的な部分と数理に関わる部分が、近世における西洋天文学の導入を受けて峻別されるようになったこと、しかしその過程で中国・日本における「伝統的」な思想と西洋天文学を擦り合わせるための多様な努力がなされたことなどを明らかにした。この成果は2018年3月にシカゴ大学との合同ワークショップにて発表し、学際的な視点からの指摘・助言を受けることができた。また、大阪市において資料調査を行い、古代から近世にかけての天文道に関する資料を収集した。 2016年度の反省として中国における術数との比較ができなかったことを挙げていた。これについては、古代中国の堪輿との比較検討を進めるため、前段階として同テーマに関わる英語論文の翻訳を行った。当該翻訳は『中國出土資料研究』に掲載される予定である。 加えて、宗教学的な視点での研究が進められなかったことも2016年度の反省点であった。2017年度は「聖なる時間と俗なる時間」という宗教学における重要なテーマに本研究を接続させたいと考えていた。したがって古代から近代にいたる「聖」概念の展開を追った。その成果をまとめた論文は2018年度中に思想誌『nyx』に掲載される予定である。
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