研究課題
特別研究員奨励費
優れた有機光電変換デバイスの実現には,活性層を構成する有機分子が薄膜中で集合体として発現する特性を精密に制御することが極めて重要である.しかしながら,分子の集合挙動を支配する構造因子については未知の部分が多い.本研究では分子の側鎖に注目し,親水性オリゴエチレングリコール(OEG)基と疎水性アルキル基が,低分子有機半導体の薄膜モルフォロジーや太陽電池特性,フォトトランジスタ特性に与える影響を評価した.親水性置換基は,ポリマー材料において移動度や材料間の混和性改善に寄与することが報告されているが,低分子材料における知見はほとんどない.ここでは,OEG基を導入したO4-DPPとアルキル基を導入したC14-DPPとを比較した.π共役骨格や光吸収特性がほぼ同等であるにも関わらず,薄膜状態においてO4-DPPはC14-DPPに比べて0.21 eV小さいイオン化エネルギー(IE)を示し,それに伴いバルクヘテロジャンクション型太陽電池の開放電圧(VOC)が0.24 Vも低下した.X線回折測定の結果から,この差異はO4-DPPとC14-DPPの分子パッキングの違いに由来することが示唆された.また,短絡電流密度(JSC)と曲線因子(FF)にも大きな差が見られ,原子間力顕微鏡による薄膜表面の観察から,相分離挙動の違いがその要因であることが示された.さらに,フォトトランジスタ特性においても,O4-DPPとC14-DPPとで明確な光応答性に差がみられた.両者は光吸収特性や電荷移動度の差が小さいことから,光応答性の有無は光誘起キャリア生成における電極と有機半導体間のエネルギー準位に起因していると考察される.
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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J. Porphyrins Phthalocyanines
巻: 20 号: 08n11 ページ: 1350-1360
10.1142/s1088424616501108