研究課題
特別研究員奨励費
本研究ではリン脂質フリッパーゼであるATP10Aのホスファチジルコリン(PC)特異的なフリップ活性が担う細胞機能およびその制御機構を突き止めることを目的として研究を行ってきた。また、研究遂行の過程でATP10のファミリーであるATP10Dが糖脂質を基質とすることを新たに見出したため、その脂質選択・輸送のメカニズムを探る研究を行った。ATP10Aの過剰発現により細胞形態は変化する。そのメカニズムを探るため、ATP10Aの発現によって細胞-細胞外マトリックス間接着因子であるインテグリンの細胞内動態が影響を受けているのではないかと仮説をたて検証した。その結果、ATP10Aの過剰発現によってインテグリンを含む細胞膜局在タンパク質のエンドサイトーシスが亢進していることを発見した。これはATP10Aが細胞膜においてPCをフリップすることによって細胞内向きの湾曲形成を促進し、膜タンパク質のエンドサイトーシスを亢進する機能があることを示唆する。この研究成果は共著として論文に発表された。近年、酵母のリン脂質フリッパーゼがグリセロリン脂質のみならずスフィンゴ脂質をフリップできる可能性が示唆された(Roland et al. PNAS 2017)。そこでヒトのフリッパーゼの中にもスフィンゴ脂質を基質とするものがあるのではないかと考え実験をしたところ、今まで基質が全く不明であったATP10Dがスフィンゴ糖脂質であるグルコシルセラミドをフリップすることを突き止めた。ATP10Dの遺伝的な変異は脂質異常症との関連が報告されていることから、ATP10Dによるグルコシルセラミド輸送が脂質の代謝や恒常性の維持に重要な働きをしている可能性がある。さらに、ATP10Dがグルコシルセラミドを選択・輸送するのに重要なアミノ酸残基を決定した。これらの研究成果を国内、国際学会で発表し、論文は現在投稿中である。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2018 2017 2016
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件)
The EMBO Journal
巻: in press 号: 9
10.15252/embj.201797705
120007144982
Nat Commun.
巻: Nov 10;8(1) 号: 1 ページ: 1423-1423
10.1038/s41467-017-01338-1
120006365525