研究課題
特別研究員奨励費
前頭側頭葉変性症(FTLD)は、脳の前頭葉および側頭葉における顕著な萎縮が観察される認知症疾患の1つである。主に性格変化と社会的行動障害が観察される。FTLDの病態は明らかでなく、病態理解を進める新たな知見が求められていた。FTLDに関する知見はタンパク質などの高分子において進んでおり、神経伝達物質などの低分子解析はあまり進んでいなかった。そこでFTLDとFTLDでない疾患(non-FTLD)の患者脳における神経伝達物質の量と分布を明らかにし、FTLDの病態に関連する知見を得ることで、治療法・治療薬開発の足掛かりとすることを目的とした。測定を試みた神経伝達物質はタウリンなど5種類とした。測定対象の標品およびマウス組織を用いて、液体クロマトグラフィー-質量分析法を用いた定量解析系とイメージング質量分析による分布解析系の立ち上げに取り組んだ。特にタウリン解析に関しては、FTLD(9症例)およびnon-FTLD(9症例)の前頭葉・後頭葉をそれぞれ定量解析した結果、FTLDの病変部である前頭葉において他症例よりも定量値が1.5~2倍程度高値を示す症例があると分かった。これらは異常リン酸化したtrans activation responsive region-DNA-binding protein of 43 kDa(TDP-43)陽性群であった。分布解析を行ったところ、異常リン酸化TDP-43陽性群では白質と灰白質の境界にタウリンが多く存在していることが分かった。特にタウリンが高値を示した2症例の境界を詳細に解析すると、白質と比較して神経細胞の多い灰白質に多く分布していることが分かった。この結果から異常リン酸化TDP-43群ではタウリンが白質と灰白質の境界に存在し、神経細胞へ何らかの影響を与えている可能性が示唆され、病態に関連した知見を得られたと考えられた。
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
Anal Bioanal Chem.
巻: 409 号: 6 ページ: 1475-1480
10.1007/s00216-016-0119-3