研究課題
特別研究員奨励費
シロオビアゲハは擬態型メスのみが毒蝶に紋様が似るベイツ型擬態を示すチョウとして知られている。擬態型の表現型は1遺伝子座(H 座)で制御され、また擬態型(H)は非擬態型(h)に対して優性であることが遺伝学的に示されている。近年我々は、H座内の性分化を制御するdoublesex (dsx)が擬態型の形質発現に重要であることを明らかにした。先行研究より得られた知見をさらに深め、シロオビアゲハにおけるベイツ型擬態の分子メカニズムの解明を目指し、(1)dsx下流の遺伝子ネットワークの探索。(2)近縁なベイツ型擬態を示すチョウ(ナガサキアゲハ)の比較ゲノム解析による責任領域の同定。のテーマのもと研究を進めた。今回、擬態型メス後翅にエレクトロポレーション法により擬態型dsxに対するsiRNAを導入した翅と非導入翅由来のRNA-seqデータを用いた遺伝子発現変動解析の結果、モルフォゲン因子や免疫応答因子の擬態形質への関与が示唆された。更にqRT-PCRによる発現定量解析とエレクトロポレーション法による機能解析を行ったところ、Wnt1, Wnt6を正に、abdAを負に制御することで擬態紋様を形成していることが機能的に示された。これらの因子の多くは鱗翅目昆虫で保存されており、Papilio属における翅の擬態紋様形成に広く関わっている可能性が考えられた。比較ゲノム解析の結果から、逆位の有無の差異はあるが、ナガサキアゲハの擬態の責任領域はシロオビアゲハと同様H 座近傍に存在していることが明らかとなった。系統解析の結果を踏まえると、共通祖先内で擬態型のハプロタイプが生じ、種分化後にbalancing selection によって維持される平行進化によってナガサキアゲハの擬態が生じたと推測した。上記のナガサキアゲハの結果については学術雑誌Science Advanceにて論文掲載されている。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (1件)
Science Advances
巻: 4 号: 4
10.1126/sciadv.aao5416
Scientific Reports
巻: 6 号: 1 ページ: 34782-34782
10.1038/srep34782
120006223592