研究課題
特別研究員奨励費
中性子星低質量X線連星系 LMXBは、太陽質量以下の比較的軽い星と、中性子星との連星系で、伴星から絶えず中性子星に質量降着が起きている。伴星からの降着物質は、角運動量を保持したまま降着し、降着円盤を形成する。また、この系に属する中性子星は磁場が弱いため、降着物質は中性子星表面に堆積し、臨界温度を超えると核融合反応を起こし爆発する (Type-I バースト)。伴星からの降着物質が主に水素であるため、中性子星表面は陽子過剰な環境であることが期待され、このような環境下で核融合反応が起こると、早い陽子捕獲反応 (rp-過程) が進行し、Z~50 の重元素が生成されることが理論的に示唆されているが、直接的な証拠は得られていない。LMXB はスペクトル形状から、ソフト状態とハード状態に分けられる。ソフト状態は、降着円盤からの軟X線放射 (主に 10 keV 以下) が卓越している時期であり、ハード状態は、中性子星表面もしくは円盤からの黒体輻射が中性子星周辺に存在する希薄な高温プラズマ (コロナ) によって逆コンプトン散乱されて、硬X線で明るい時期に対応する。これまでの研究から、LMXBの観測スペクトルは、どちらの状態においても大局的には、降着円盤から放射と、コンプトン散乱された2つの成分で説明できることが知られている。しかし、典型的な中性子星 LMXB である Aql X-1のエネルギースペクトルのおよそ30 keV付近に、前述の2つの成分では説明できない超過構造があることを私たちは見つけた。そこで、この構造がrp-過程で生成された元素からのK殻放射である可能性について、定量的に検討した。スペクトル解析の結果、K吸収端のエネルギーが26keV、電子温度が11 keV の再結合放射で矛盾無く説明できることがわかった。またこの結果は、先行する理論研究ともよく合う結果であった。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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