研究課題
特別研究員奨励費
アラビノガラクタン-プロテイン(AGP)は植物界に普遍的に存在する細胞外プロテオグリカンであり、様々な生理現象に関与している。AGPは複雑な糖鎖構造を持つため、糖鎖の分子機能は未だに不明な点が多く残されている。本研究では、微生物由来の特異的かつ強力なAG糖鎖分解酵素、エキソ-β-1,3-ガラクタナーゼ(Il3GAL)を利用し、AG糖鎖の機能阻害が可能な植物の作出し、AG糖鎖の分子機能の解明を目指している。平成28年度は、デキサメタゾン(DEX)によりIl3GALが発現し、AG糖鎖の分解を誘導するシロイヌナズナ、DEX::Il3GAL植物に加えて、Il3GALの活性部位に点突然変異を入れたDEX::Il3GAL-PM植物を作出した。これらの植物においてDEX処理におけるAG糖鎖分解活性の上昇やAG糖鎖の分解を確認した。さらにDEX::Il3GAL植物をDEX処理するとセルロース量が顕著に減少することを見出した。平成29年度は、AG糖鎖の分解により起こる表現型を走査型電子顕微鏡で観察を行った。DEX処理したDEX::Il3GAL植物の詳細な観察により、表皮細胞だけでなく様々な細胞で著しい細胞肥大が観察された。このような部分的な細胞肥大は、野生型植物やDEX::Il3GAL-PM植物では起こらなかった。細胞肥大はセルロースの合成が異常となり、細胞壁の強度が弱くなったためと考えられる。セルロースは表層微小管に沿って合成されるため、表層微小管を可視化し、経時的に観察を行った。DEX::Il3GAL植物をDEX処理すると48時間後から細胞が肥大しはじめ、表層微小管の密度や配向が変化していた。本研究は、真菌由来の分解酵素を利用し、AG糖鎖の分解を誘導する新規アプローチを確立し、AGPが直接または表層微小管の変化を介してセルロースの合成量に影響していること明らかにした。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件) 学会・シンポジウム開催 (1件)
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