研究課題
特別研究員奨励費
磁気転移温度の高い分子磁性体を開発する上で、近接スピン数の増大およびスピン量子数の増加を同時に達成する必要がある。本研究では、スピン中心として複数のラジカル骨格を含む配位子と常磁性金属に注目し、両者を磁気的に相互作用させた常磁性金属錯体を合成し、近接スピン数が大きい集積体の構築することを目指している。具体的には、ラジカル種として配位能を有するピロリンN-オキシル(PO)を使用した基底多重項分子を設計し、これを配位子として金属錯体を構築する。平成29年度は、前年度に合成、評価を行った基底三重項分子である、PO-フェルダジル(VZ)、PO-ニトロニルニトロキシド(NN)ヘテロビラジカルを配位子とした、銅錯体の合成および磁気物性評価を行なった。また、平成28年度に引き続き、基底三重項状態を示すジラジカル分子の設計、合成および磁気特性の評価を行なった。1. PO-VZおよびPO-NNを配位子とし、Cu(hfac)2を作用させることで金属錯体の合成を行い、構造―磁性相関を議論した。PO-VZ錯体では、POのニトロキシル部位とVZのカルボニル酸素が銅に配位することで一次元鎖構造を形成しており、固体磁気測定および計算化学的手法によりPO部位と銅イオン間で強磁性的相互作用がはたらいていることを明らかにした。一方、PO-NNではNNのニトロキシル部位が銅イオンに配位した錯体が得られ、強磁性的相互作用の発現が示唆された。2. POをキノリンN-オキシルのg辺に縮環した誘導体の磁気特性評価を行い、分子内反強磁性的相互作用がはたらくことを明らかにした。前年度に得られた知見を加味して、分子内磁気的相互作用と電子状態を整理することで、POに導入するスピン源に由来する不対電子およびスピン密度の分布が分子内相互作用に影響を及ぼすことを明らかにした。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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ChemPhysChem
巻: 19 号: 2 ページ: 175-179
10.1002/cphc.201701274
Chemistry - A European Journal
巻: 印刷中 号: 31 ページ: 7939-7948
10.1002/chem.201800163