本年度は初めに、昨年度にスウェーデン王立工科大学(KTH)との共同研究で発見したマイクロ足場構造中での液滴生成現象に対する三つの無次元数(2流体の粘度比、接触角の余弦とキャピラリ数)の影響を調べた。この液滴生成現象は、水と油の界面がマイクロ足場構造を通過する過程で水溶液の液滴が生じるというものである。シリンジポンプを利用した流速制御下で、親水の足場構造中では非常に小さい毛管数(~10^-4)でも液滴が生成されることが分かった。従来のマイクロ流体デバイスでは高毛管数で粘性の影響が支配的な場合に液滴が生成されるが、本技術では表面張力の影響が支配的な場合でも液滴が生成可能であることが分かった。この成果は、平成30年10月に札幌で行われた第9回マイクロ・ナノ工学シンポジウムで、特別研究員によりポスター発表され、日本機械学会マイクロ・ナノ工学部門から若手優秀講演表彰を授与された。 続いて、神奈川県立産業技術総合研究所(KISTEC)の人工細胞膜システムグループとの共同研究により、足場構造中に生成された液滴アレイを積み重ねることで人工的に脂質二分子膜を形成できることを実証した。ハイドロゲル化で液滴をマイクロ足場構造に固定し、それらを手動で積み重ね脂質二分子膜を形成した。この脂質二分子膜は、微小電流計測によって確認された。この成果は、平成31年1月に韓国ソウルで開催された査読有の国際学会MEMS2019に採択され、研究代表者がポスター発表を行った。これらの成果をまとめ、近日中の論文投稿を予定している。
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