研究課題
特別研究員奨励費
がんは、罹患数・死亡数ともに上位を占める疾患であり、その安全な治療法の確立は未だ重要な課題である。本研究では、がん細胞選択的膜透過性を有する分子送達キャリアとがん細胞選択的薬効発現特性を有する人工核酸を組み合せた、二重のがん選択性を有する安全性の高い核酸医薬システムを構築することを目指した。本年度は、昨年度に新規開発した、がん細胞選択的分子送達キャリアである、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)応答型ポリエチレングリコール(PEG)複合化オリゴアルギニン(Arg)の詳細な機能評価に取り組んだ。本分子は、MMP基質を介してオリゴArgとPEGを連結することでPEGによるオリゴArg由来の細胞膜透過機能の抑制を期待し、MMPが高発現するがん細胞付近においてはMMP基質の分解に伴うPEG解離に基づく細胞膜透過機能の回復を期待した分子設計となっている。既に得られた定性的評価に加えて、MMPによる基質切断反応の速度論的解析や、PEG化による表面電荷変化に関する検討、さらには三次元細胞培養系を用いた細胞内取り込みの評価を行った。その結果、設計した分子送達キャリアが、MMPによって細胞膜透過性を特異的に発現する優れた分子であることを、培養細胞レベルで実証することに成功した。続いて、この送達キャリアと当研究室提案のがん細胞選択的人工核酸との複合化について検討を試みたが、三次元細胞培養系では評価が困難なことが判明した。そこで計画を変更し、一般的な小分子に基づく抗がん剤を送達する送達キャリア-薬剤複合体を設計・評価し、新規がん細胞選択的薬剤送達キャリアの有用性を示すことに成功した。当初予定していた二重の安全性を有する核酸医薬システムの構築には至らなかったが、本研究で用いた分子送達キャリアは核酸医薬への応用も十分に期待でき、がんを標的とした核酸医薬の発展に大いに貢献できると考えられる。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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Chemistry Letters
巻: 47 ページ: 381-384
巻: 45 号: 3 ページ: 350-352
10.1246/cl.151157
130005132165