近年、水不足は地球規模での深刻な問題となっており、水資源の確保に向けた技術革新が求められている。この解決策としては海水・かん水・下水・汚染河川水の有効利用が必要不可欠であり、従来は静水圧を利用した膜分離技術である逆浸透(RO)膜法による海水淡水化が行われてきた。しかし、RO膜法は静水圧を駆動力とするため、造水コストが高いことが問題として挙げられる。そのため省エネルギーコストでの水処理技術が求められている。そこで本研究では水処理の次世代技術として期待されている正浸透(Forward Osmosis: FO)膜法に着目した。FO膜法は処理対象溶液(FS)と駆動溶液(DS)を半透膜(正浸透膜)で隔てることにより生じる浸透圧差を利用してFS側からDS側に自発的に水のみを透過させる方法である。従来のRO膜法と比較して、駆動力が浸透圧差であるため、低エネルギーコストで水処理が行えると期待されている。本研究ではバイオエタノール生産プロセスへのFO膜法の導入に関して検討を行った。 バイオエタノール生産プロセスへのFO膜法の導入を検討した。バイオエタノール生産プロセスにおいて、エタノール発酵に用いられる糖液は通常1~2 wt%と低濃度であるため、高効率・高濃度でバイオエタノールを得るためには発酵前段の糖液濃縮が重要となる。これまでこの濃縮プロセスとして検討されていたのは圧力駆動NF膜法であるが、濃縮は原液濃度の5倍程度に留まっていた。そこで新たにFO膜法による糖液の濃縮について検討を行った。FO膜法では駆動力が浸透圧差であるため、NF膜法よりも高い圧力駆動力の負荷が可能であり、そのためより高い濃縮倍率が期待できる。まず模擬糖液を用いてDS種の選定を行い、選定された最適なDSを用いて実糖液の濃縮試験を行った。その結果、糖濃度は従来法では達成することが出来なかった原液濃度の8倍濃縮に成功した。
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