配分額 *注記 |
3,400千円 (直接経費: 3,400千円)
2018年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
2017年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
2016年度: 1,200千円 (直接経費: 1,200千円)
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研究実績の概要 |
本年度はSO2光解離反応における硫黄同位体異常の全圧依存性を調べる実験、実験結果の解析、論文化を行った。観測された同位体異常は、10kPaを上回る全圧では明らかに全圧に依存し、一方で10kPa以下の全圧では一定であった。先行研究により報告されているSO2の吸収線幅(圧力幅・ドップラー幅)と本研究の実験条件を比較し、観測された同位体異常の全圧依存性はSO2吸収線の圧力広がりに起因すると推定した。続いて、先行研究の高分解能のSO2吸収スペクトルおよび同位体分子種ごとの吸収波長の違いを利用して同位体分子種ごとの(32SO2, 33SO2, 34SO2, 36SO2)吸収スペクトルを合成し、この吸収スペクトルに対して吸収線の圧力広がりのモデル化を試みた。吸収線の圧力広がりをモデル化した吸収スペクトルは実験結果の全圧依存性を再現した。以上から、観測された同位体異常の全圧依存性はSO2の吸収線の圧力広がりに起因すると結論づけた。モデル化した吸収スペクトルを用いて任意の全圧およびSO2分圧におけるSO2光解離反応の同位体異常を計算できるようになった。モデル化した吸収スペクトルから同位体異常を計算し、初期地球の地質記録の同位体異常(Δ33S, Δ36S)と比較すると、27-25億年前の大きな同位体異常(Δ33S > +12‰)を説明するには1気圧以下の全圧でなければならないことがわかった。これは当時の地表の大気圧が1気圧以下であったか、あるいは光解離反応が主として大気圧の低い上空で光解離したことを示す。本研究は硫黄同位体異常が大気全圧や吸収線幅を反映することを光解離実験により実証することに初めて成功したといえる。これらの成果をまとめ、査読あり国際誌に発表し出版された(Endo et al., 2019 GRL)。
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