研究実績の概要 |
PQQ-GDHによるD-ガラクツロン酸酸化でガラクタル酸を生産できることが従前の研究で分かった。この酵素が幅広い糖を基質とすること、立体異性の活用でより幅広い応用展開を期待できることなどを勘案し、他の生物由来ヘキスロン酸からのガラクタル酸ジアステレオマー生成も試みた。D-グルクロン酸はウルバンやヘミセルロース、D-マンヌロン酸とL-グルロン酸はアルギン酸を構成する。GDHで前二者の酸化を試みた。加えてCoprinopsis cinerea由来ピラノース脱水素酵素のPQQドメイン(DHPDH)でL-グルロン酸酸化を試みた。DHPDHもアノード触媒として適している。D-グルクロン酸とL-グルロン酸からD-グルカル酸、D-マンヌロン酸からD-マンナル酸を得られたので論文として発表した。 ガラクタル酸と電力を同時生産する酵素バイオ燃料電池に関する検討も行った。GDH電極によるD-ガラクツロン酸酸化によりガラクタル酸とその1,4-ラクトンがファラデー効率99%で生成したことをNMRで確認した。O2とD-ガラクツロン酸がGDH電極とビリルビン酸化酵素(BOD)電極の触媒電流にそれぞれ有意に影響していないことをCV測定と二元配置分散分析で明らかとした。続いてポリガラクツロン酸をペクチナーゼで加水分解してD-ガラクツロン酸を収率86%で得た。不純物による反応の阻害が予想されたが、加水分解物水溶液中での上記2電極のCV測定では、純品溶液と比較し触媒電流の減少は観測されなかった。GDH電極をアノード、BOD電極をカソードとする電池の開回路電圧はCV測定で各電極の触媒電流が出力し始めた電位の差と一致していた。電池の対照測定と比較して最大電流と最大出力は大きく、D-ガラクツロン酸とポリガラクツロン酸加水分解物のどちらを燃料とする場合でも、電池として機能することを確認できた。論文投稿準備を進めている。
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