研究課題
特別研究員奨励費
申請研究では、マウスによる恐怖観察系を用いて、経験に依存した共感の調節機構の解明を目的としている。なかでも、共感への関与が示唆されている前帯状皮質に着目して研究を行った。仲間のマウスが電気ショックを受けている様子を別のマウスに観察させると、観察マウスは自身が電気ショックを受けていないにも関わらず、恐怖反応である「すくみ反応」を表出する。このすくみ反応を示した度合いを共感の指標として定量した。本研究では、マウスに電気ショックを事前経験させた後に、仲間のマウスが同様の電気ショックを受けている様子を観察させた。その後、観察マウスから脳切片を作製し、生化学的手法により神経活動を検出したところ、事前経験時に活動した細胞は、恐怖観察時にも再び活性化しやすいことが明らかとなった。また、抑制性神経伝達を増強するエタノールの前処置により、共感の増大および細胞の再活性化が促進されることが明らかとなった。さらに、エタノールによる共感の増大は、前帯状皮質におけるGABA受容体の活性化を介したものであることが種々の薬理学的検討により示唆された。また、逆行性神経トレーサーを用いた検討により、事前ショック経験と恐怖観察の両方で活動する細胞の中には、恐怖記憶を担う扁桃体の基底外側核へ投射するものが多いことが明らかとなった。以上の結果は、エタノールが前帯状皮質における興奮抑制バランスを調節し、活動細胞の選別に関わることにより、自己の経験と他者の様子とを紐づける共感を促進している可能性を示唆するものである。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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Nature Communications
巻: 9 号: 1 ページ: 00-00
10.1038/s41467-018-05894-y
Journal of Integrative Neuroscience
巻: 17 号: 3-4 ページ: 671-678
10.3233/jin-180094