研究課題
特別研究員奨励費
本年度の研究実績は大きく三つに分けられる。一つ目は、三重縮環コロール二量体のガリウム錯化による対面型ジラジカル分子の合成と物性評価である。ラジカル種は反応性が高く不安定であるため、安定なラジカル分子の合成と物性評価は重要な課題である。また、これまでのπ共役系ジラジカル分子における磁気相互作用は結合を介したものが多く、対面型で空間を介した例は限られていた。今回の研究では、三重縮環コロール二量体をガリウム錯化して水酸基架橋二量体を形成することで、安定な対面型ジラジカル分子の合成に成功したので、構造解析や物性評価、対面型ジラジカル性の発現機構の解明などを研究目的した。各種測定の結果、この二量体は大きく湾曲した構造を有し、ガリウムイオンとコロールユニットの価数が絶妙にバランスの取れた電子状態をとることで、対面型ジラジカル性が発現したことを明らかにした。二つ目は、三重縮環コロール二量体の銅錯体とジカチオン種の合成である。三重縮環コロール二量体の銅錯体とジカチオン種で、銅のスピン間相互作用が変化することを見出した。すなわち、中性の銅錯体では弱い強磁性相互作用を示すのに対し、ジカチオン種では反強磁性相互作用を示した。この理由を結晶構造や計算構造の結合長やスピン密度から考察した。三つ目は、メゾ―メゾ結合コロール二量体の酸化反応機構の解明である。メゾ―メゾ結合コロール二量体の酸化的縮環における反応機構はこれまで未解明であった。今回の研究では、メゾ―メゾ結合コロール二量体のフリーベース体及びコバルト錯体をキノン系酸化剤で酸化することで、縮環反応の中間体と考えられる中性ジラジカル種を単離することに成功した。これら中性ジラジカル種のX線結晶構造解析や磁気測定を行い、さらなる酸化反応によって縮環体が得られることを確認した。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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