研究課題
特別研究員奨励費
樹木から脱落した落葉などの有機物は、環境の変化に応じた土壌微生物による分解作用を受けて、分解呼吸として大気へのCO2放出そして溶脱として水とともに土壌へ炭素を流出する。そのため森林土壌においては、有機物の供給量と炭素の放出量(分解呼吸量)・流出量(溶脱量)のバランスによって、土壌炭素蓄積量が決定される。本研究では、落葉層の炭素の放出量(分解呼吸量)と流出量(溶脱量)の季節変化を定量的に評価するために、両者の観測を可能としたチャンバーを用いて、1年をとおした分解呼吸量の連続測定と溶脱量の定期観測を行った。チャンバーは下部に雨水を貯水できるタンクを備え、下部タンクとつながったパイプを通して水を回収する構造で、同じ落葉サンプルからの分解呼吸量と流出量の測定を同時に行うことができる。落葉層の分解呼吸量は、自動チャンバーを用いた連続観測によって1時間ごとの測定を行った。落葉層の溶脱量は、林内雨(N=4)と落葉層透過水(N=5)の溶存炭素量の差から求められた。分解呼吸は、落葉層の湿潤―乾燥サイクルに応じて増減した。降雨時の分解呼吸はピークを示し、そのピークの大きさは温度に応じた季節変化を示した。落葉層の溶脱量は分解初期や夏期において高い傾向にあるが明瞭ではなかった。一方で、落葉層の溶脱量は採水量と正の関係を示し、降水量に応じて落葉層から炭素が流出することが明らかになった。1年を通して実測された値の積算値である年間の分解呼吸量は、52.42 gC m-2であり、溶脱量は2.17 gC m-2であった。そのため、年間の落葉炭素収支において、初期落葉重量に対し、分解呼吸量として21.2%、溶脱量として0.9%の炭素が放出・流出することが明らかとなった。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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