研究実績の概要 |
2016年度までに、ペプチドミメティックの創薬テンプレートとして有用な多種の(L,D), (L,L)型に相当する種々のクロロアルケン型ジペプチドイソスター(CADI)の合成法の開発に成功している。2017年度は、CADIの応用として、細胞接着因子であるαVβ3 integrinとvitronectinとのbindingを阻害する環状RGDペプチド(cyclo[-Arg-Gly-Asp-D-Phe-Val-])に対して、CADIの導入および活性評価を行った。 CADI含有-環状RGDペプチド(cyclo[-Arg-Gly-Asp-D-Phe-ψ[(Z)-CCl=CH]-Val-])は2016年度までに開発した合成法およびFmoc固相合成法によって合成を達成した。また、合成したCADI含有-環状RGDペプチドはαVβ3 integrin-vitronectinとの阻害実験にて評価を行ったところ、親ペプチドよりも高い阻害能を有しており、ペプチドミメティックの有効性について示すことができた。 本ペプチドミメティックの活性向上の考察として、NMR 測定による距離と二面角の拘束を掛けての分子動力学計算(MDシュミレーション)による立体配座の解析を行い、分子の揺らぎの指標となるRMSD値の算出を行った。計算の結果、クロロアルケン骨格を有する環状RGDペプチドは親ペプチドと比較して、分子構造の揺らぎが小さいことが示唆された。したがって、クロロアルケン骨格を導入することで、環状ペプチドの全体構造がより剛直になり、αVβ3 integrinとの相互作用が向上したために、阻害値能も上がったものと考えられる。 上記のように、2017年度はCADIを基盤としたペプチドミメティックを活用することで、ペプチドを起源とした分子の機能向上を明らかとしており、今後のペプチド創薬に大きく貢献できると考えられる。
|