研究実績の概要 |
本研究では、ヒトの腸内環境という生態系において、母乳オリゴ糖をめぐって繰り広げられるビフィズス菌を中心とした各種腸内細菌の種間関係を生態学的な視点および代謝動態学的な視点から解明することにより、ヒトと腸内細菌との共生・共進化メカニズムを紐解くことを目的とする。まず、乳幼児型のビフィズス菌4種(B. bifidum JCM1254, B. breve JCM1192, B. infantis JCM1222, B. longum JCM1217)を共培養し、母乳オリゴ糖をめぐるビフィズス菌4種の競合関係を明らかにすることを目的としてin vitro実験を行った。組み合わせとしては、ラクト-N-ビオシダーゼ活性を有するビフィズス菌2種(B. bifidumおよびB. longum)を同じ割合になるように混合し共培養実験を行った。ラクトース、ラクト-N-ビオース、ラクト-N-テトラオースを添加した培養条件すべてにおいて、B. bifidumが90%を占め優先化することが示された。同じ培地条件で純粋培養実験を行った際にはB. bifidumおよびB. longumは同程度増殖したことを確認している。このことから、母乳オリゴ糖の1種ラクト-N-テトラオースやラクトース、ラクト-N-ビオースを優先的に利用するのはB. bifidumの方であることが、in vitroの実験から示された。4種すべてのビフィズス菌を共培養した際にもB. bifidumが優先的に増殖することが示された。ラクト-N-ビオースを添加した条件ではB. bifidumだけでなくB. breveが優先的に増殖した。以上の共培養実験の結果から、乳幼児型のビフィズス菌4種の中で、B. bifidumが優先的に増殖することが示された。
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