研究実績の概要 |
骨格筋は骨格筋細胞である筋線維により構成され、筋線維は1mm線維長あたり100程度の核を有する多核の細胞である.これまでに,レジスタンス運動など骨格筋の肥大を生じさせる運動トレーニングは核を増加させることが報告されてきた. 細胞核は核酸合成の中心的なオルガネラであることから,その数は 骨格筋量の決定にかかわるタンパク質合成能力にも関与するものと考えられる. 本研究ではレジスタンス運動による骨格筋適応である筋肥大における筋核の役割を検討し明らかにすることを目的としている. 平成28年度は筋線維体積に対する核数の増加が生じる(即ち核密度の増大)廃用性筋委縮状態に着目し,筋委縮による筋核密度の増大が筋収縮によるタンパク質合成を増大させるか検討した. 具体的には実験動物を対象に萎縮筋に対し単回のレジスタンス運動を模倣した電気刺激による筋収縮を行った. その結果, 線維あたりの核数が増加した場合であっても単回の運動に伴う筋タンパク質合成の亢進は増大しないことが明らかとなった. 今年度は単回運動時のタンパク質合成応答がトレーニングを行った際の骨格筋適応に反映されるかを検討するため, 実験動物に廃用性筋委縮を導出した後, 単回運動を実施した際と同一の実験系を用いて, 3週間の慢性トレーニングを実施した. その結果トレーニングに伴う骨格筋肥大応答も単回運動後のタンパク質合成亢進と同様に廃用性筋委縮後に増大することはなく, 通常状態と同程度であった. したがって廃用性筋委縮によって生じる核密度の増大はレジスタンストレーニングによる筋肥大には影響を及ぼさないことが示唆された.
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