研究実績の概要 |
本研究はβ-Ga2O3のヘテロ接合デバイス応用に向けた薄膜成長および物性評価を行う研究である.本年度はヘテロ接合デバイスに用いる混晶化合物に関する検討のため,大きく分けて以下3点に関して取り組んだ. (1)昨年度,エピタキシャル成長によりβ-(Al,Ga)2O3の全率固溶の実現するとともに,バンドギャップ評価を行った.この中で,バンドギャップの組成依存性において2つのボーイング挙動が観察された.この特異なボーイング挙動の要因について,β-Ga2O3が有する結晶構造と配位位置に由来すると考察した. (2)混晶化は母体となる化合物の物性制御を可能とすることに加えて,異なる特性を有する化合物を混晶化させることで多機能を有する混晶化合物が期待できる.本研究では新たな酸化ガリウム系混晶化合物としてSc2O3を混晶化させたβ-(Ga,Sc)2O3に着目し,薄膜成長と物性評価を行った.その結果,Sc組成 ~ 30 %まで単相のβ-(Ga,Sc)2O3薄膜を得るとともに,β-(Al,Ga)2O3よりも大きなバンドギャップ増大が見られた.これはScが有する大きな陽性に起因すると考察した. (3)前述のβ-(Al,Ga)2O3,β-(Ga,Sc)2O3は組成の増大に伴いβ-Ga2O3と大きな格子ミスマッチを生じる.この格子ミスマッチはヘテロ接合界面における電気伝導を阻害する恐れがある.本研究ではこの格子ミスマッチの抑制のため,β-Ga2O3に格子整合するβ-(Al,Ga,Sc)2O3三元混晶化合物の薄膜成長と物性評価を行った.その結果,混晶組成 ~ 20 %まで単相のβ-(Al,Ga,Sc)2O3薄膜を得た.また二元混晶化合物よりも大きなバンドギャップを実現しつつ,大きな臨界膜厚を有するβ-(Al,Ga,Sc)2O3薄膜を実現した.
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