研究課題
特別研究員奨励費
20面体ホウ素クラスターであるカルボランやホウ素原子をトリフェニルアミン(TPA)に導入することで、新規のπ電子系分子材料を開発することを目的としている。例えば、ホウ素原子と窒素原子を大環状骨格中に同数持つシクロファン分子の異性体を合成し、発光特性を調べた。ホウ素原子と窒素原子の置換位置の違いのみで、吸収極大波長や蛍光量子収率の大きさなど光学特性が顕著に異なることを、分光学的手法を用いて明らかにした。この化合物の1電子酸化状態では、分子内電荷移動が起きることも溶液のESRスペクトル測定により明らかにした。これらの結果は、一般に無発光性分子として知られているTPAに発光特性を付与するための新たな分子設計指針を与えるものである。また、分子内電荷移動の機構を解明するためのモデル分子としてTPAを複数有する種々の化合物を合成し、酸化種の混合原子価状態を評価した。異なる共役系スペーサーであるオルトフェニレンとオルトカルボランにTPAを導入した分子を合成し、量子化学計算、電気化学測定、酸化に伴う吸収スペクトル測定、溶液温度可変ESR測定を行うことで酸化種の電子状態を調べた。これらの化合物の1電子酸化種において、π共役ユニットであるオルトフェニレン体はスルーボンド相互作用に基づくClass IIの混合原子価状態を示し、σ共役ユニットであるオルトカルボラン体はスルースペース相互作用に基づくClass Iの混合原子価状態を示すことを明らかにした。2電子酸化体に関しては、オルトフェニレン体ではスピン間に分子内反強磁性的相互作用が働く一方で、オルトカルボラン体では磁気的相互作用が実質的に存在しないことを確認し、オルトフェニレンやオルトカルボランの電子的結合の強さについて知見を得た。つまり、TPAユニット間を結ぶ共役系スペーサーの違いにより、分子内電荷移動の制御が可能であることを明らかにした。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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