研究課題
特別研究員奨励費
研究の目的は、成体での感知系脳室周囲器官に存在する神経幹細胞の特徴と機能的意義を解明することである。前年度に、終板脈管器官、脳弓下器官、および延髄最後野の中心管にタニサイト様の神経幹細胞が存在することを示した。特に、最後野が存在している延髄領域における神経幹細胞ニッチェの広がりについてほとんど分かっていなかったため、今年度は感知系脳室周囲器官に存在する神経幹細胞の特徴を明らかにするとともに、延髄中心管全体に神経幹細胞は存在するのか、またその機能にフォーカスして研究を行った。Nestin-CreERT2/CAG-CATloxP/loxP-EGFPマウスを用いて第4脳室から脊髄まで伸びる中心管を観察したところ、神経幹細胞マーカーとして用いられるNestinを発現したタニサイト様細胞が第4脳室から脊髄まで伸びる中心管に存在していることが分かった。線維芽細胞増殖因子-2(FGF-2)および上皮増殖因子(EGF)を1週間にわたり脳室内投与を行うと、感知系脳室周囲器官および延髄最後野の中心管に存在するタニサイト様神経幹細胞の増殖が促進され、FGF-2およびEGFシグナル伝達が増殖調節に関与することを示唆された。Collagenaseを脳内投与することにより、延髄領域に脳出血による脳損傷を生じさせたマウスにおいて、延髄中心管のタニサイト様細胞の増殖が有意に促進された。以上の結果は、神経幹細胞が側脳室領域だけでなく、第3脳室および第4脳室、延髄中心管に渡って広く存在していることを示しており、成体において脳室に面したエリアが神経管細胞のNicheにとって非常に重要であることが考えられる。また、神経管細胞は脳に散在して存在し、脳損傷時には損傷部位の近傍に存在する神経幹細胞nicheから効率的に修復が行われていることが示唆される。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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