研究課題
特別研究員奨励費
一般的に反芳香族分子の共役系をベンゼン縮環によってπ拡張すると分子の安定性が改善するものの、その反芳香族性は失われることが知られている。本研究では、反芳香族ポルフィリン類縁体であるノルコロールNi錯体(NiNc)の共役をベンゼン環によって拡張したテトラベンゾノルコロールNi錯体(NiTBNc)およびジベンゾノルコロールNi錯体(NiDBNc)を合成し、反芳香族ポルフィリンであるノルコロールに対するベンゼン縮環の効果を調べた。NiTBNcとNiDBNcは逆Diels-Alder反応を利用して合成し、その構造をX線結晶構造解析により明らかにすることに成功した。これらの分子の安定性はNiNcよりも低下していた。1H NMR測定より、NiTBNc とNiDBNcの反芳香族性は一般的な場合とは逆にベンゼン縮環により強くなっていることが明らかになった。実測および計算から、2つのベンゾノルコロールは非常に小さいHOMO-LUMOギャップをもつことがわかり、この狭いギャップが強い反芳香族性を誘起していることが示唆された。さらにNiTBNc とNiDBNcの物性を詳しく調べたところ、温度可変NMR測定および磁気物性測定からベンゾノルコロールが一重項ジラジカル性をもつことも明らかになった。このように、ノルコロールに対するベンゼン縮環が通常の反芳香族分子の場合とは全く異なる物性変化をもたらすことを明らかにし、強い反芳香族性と開殻性を同時に実現する新しいタイプのπ共役分子の創出に成功した。さらに、中心金属をもたないフリーベーステトラベンゾノルコロール(H2TBNc)を合成し、ベンゾノルコロールの性質についてさらに調査した。H2TBNcの1H NMRを測定すると、環内部の水素原子は57 ppm付近という極めて低磁場領域に観測され、強い反芳香族性による水素原子の脱遮蔽を観測することができた。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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