研究実績の概要 |
昨年度に合成したグルタミン-高分子リガンドの汎用性について評価した。グルタミン-高分子リガンドは昨年度に評価した膵臓がん細胞に加え、グルタミントランスポーターを過剰発現する肝臓がん細胞や肺がん細胞とも強く相互作用することを確認した。これまでの結果を論文として発表し(N. Yamada, et al. Sci. Rep. 7 (1) 6077(2017)) さらにその成果を国内外の研究者へアピールするために多くの学会発表(国内学会3件、国外学会1件)を行った。いずれの学会発表でも高い評価を受けた一方で、参加者とのディスカッションから本研究成果の今後の課題も明らかとなった。具体的には、グルタミン-高分子リガンドは生体内においてもがん細胞と強く相互作用するという優れた特性を有する一方で、それ単体では静脈投与した際に速やかに腎排泄されてしまうため、そのままでは薬物送達システムへの応用は難しいと考えられる。 そこでグルタミン-高分子リガンドの薬物送達システムへの応用を目指し、今年度終盤ではグルタミン-高分子リガンドのナノ粒子のシェル分子としての利用を試みた。蛍光相関分光法による評価では、10%ウシ血清アルブミン存在下においてグルタミン-高分子リガンドとタンパクとの相互作用は観察されず、グルタミン-高分子リガンドは血中においてステルス性を発揮すると期待できる。一方、グルタミン-高分子リガンドのナノ粒子表面への修飾法についてはまだ検討中であり、今後の課題である。
|