研究課題
特別研究員奨励費
本研究では、質問紙調査、プログラム評価研究を用いて、認知行動療法がどのように抑うつ症状の改善をもたらすかについての一連の研究に取り組んだ。まず、128名の大学生を対象に、認知的要因(非機能的態度:抑うつを引き起こすネガティブな考え方)と行動的要因(報酬知覚:快事象を経験する程度)が抑うつ気分や興味・喜びの喪失とどのような関係性を示すのかを検討した。その結果、報酬知覚が少ない大学生ほど、抑うつ気分や興味・喜びの喪失が強いこと、非機能的態度は報酬知覚が少ない場合にのみ抑うつ気分を強めることが明らかになった。次に、102名のうつ病患者を対象に、報酬知覚の少なさが抑うつ気分や興味・喜びの喪失を強めるという関係性に対して、目標に向かう活動がどのように影響しているのかを検討した。その結果、目標に向かう活動が報酬知覚を良好にし、興味・喜びの喪失を緩和させていることが明らかとなった。上述の研究成果に基づき、うつ病の認知行動療法の構成要素の中でも、行動的要因に着目した方法である行動活性化による抑うつ症状に対する作用機序を明らかにするために、4セッションで実施できる集団行動活性化を開発した。55名のうつ病患者に行動活性化を実施し、抑うつ症状(抑うつ気分、興味・喜びの喪失)、行動的要因(目標に向かう活動、報酬知覚)を実施前後で測定した。包括基準に合致した27名を対象とした分析の結果、各変数が実施後に改善し、興味・喜びの喪失の改善に対して目標に向かう活動や報酬知覚の改善の程度が影響していた。したがって、認知行動療法の構成要素の中でも、行動活性化は、興味・喜びの喪失に対して有効な技法であり、その背景理論に基づく作用機序を経ることが科学的に初めて実証された。今後、うつ病の症状の中でも、興味・喜びの喪失の改善を標的とした場合に、行動活性化を適応できるという点を明らかにできたことが意義深い。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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臨床心理学
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Psychology Research and Behavior Management
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北海道医療大学心理科学部研究紀要
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巻: 印刷中