研究課題
特別研究員奨励費
本研究は溶液内の超高速過程を捕捉するためsub-20fsパルス光源の開発と、それを用いたポンププローブ液体光電子分光実験が目的であった。当初はフィラメンテーション法を応用し、sub-20fsの真空紫外光(133nm)の生成を予定していたが運用上の手間などの観点から、非直線型パラメトリック増幅機構(通称NOPA)を用いたsub-20fs可視光の生成に変更した。生成した光を分割し、一方で第二次高調波発生で紫外光を生成することで、可視光ポンプ・紫外光プローブの実験を行った。これらのパルス幅は約19fsであり、相互相関幅は25fsであった。このように極短パルスの開発、および液体光電子分光実験への応用を達成することが出来た。光電子分光実験では水和電子の励起状態ダイナミクスをポンプ・プローブ法を駆使して観測した。水和電子は放射線化学や生物化学の分野で注目されてきたが、大量の溶媒分子による複雑性や、電子の量子性のために未だ不明瞭な点が多い。特に励起状態水和電子におけるsub-100 fsの超高速緩和過程はこれまでの実験では捕捉しきれておらず、実験的アプローチが切望されている箇所である。このため励起状態水和電子の研究は開発光源の性能を発揮する上で適していると判断し、これを対象とした。測定の結果、従来提唱されてきたダイナミクスを厳密に追跡することができ、指数関数でフィッティング解析を行ったところ水和電子の励起-基底状態間の内部転換は60fsで起きると結論された。 また内部転換が起きる前に、溶媒緩和が20-30fs以内で起きていることを示唆する結果も確認された。このダイナミクスは先行研究では時間分解能不足のために十分に評価できておらず、本研究で初めて信頼性の高い観測結果を得ることに成功した。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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Physical Review Letters
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