研究実績の概要 |
今年度は主に、①レニウム系酸化物の水分解用光触媒への適用とバンド構造解析、②新規ルテニウム系助触媒の開発の2点に取り組んだ。
これまで、安定かつ高活性な酸化物半導体光触媒では、その構成カチオン種は主に3価から6価の価数を有していた。本研究では、7価の価数を有するレニウムイオン(Re7+)を主構成元素とする酸化物半導体が光触媒として機能することを初めて見出した。M3ReO8 (M = Y, La, Nd, Sm, Eu, Gd, Dy, Yb)は500-550 nmまでの可視光を吸収し、犠牲還元剤Ag+存在下において酸素を生成した。電気化学測定およびDFT計算の結果から、主にRe 5d軌道が伝導帯下端を形成することにより、可視光吸収が発現していることが明らかとなった。本成果は学術雑誌Journal of Materials Chemistry Aに掲載された。
ヨウ素酸・ヨウ化物(IO3-/I-)をレドックスとする二段階励起(Z-スキーム)型水分解系では、酸素生成用光触媒上でのIO3-の還元がしばしば律速となるため、Ptなど適切な還元用助触媒が必要となる。本章では、このIO3-還元に高い触媒活性を示す新規Ru種助触媒の開発に取り組んだ。RuCl3水溶液中でのイオン吸着という極めてシンプルな手法によって生成する酸化ルテニウム水和物(RuO2・nH2O)種が、従来のRuO2助触媒よりもIO3-の還元に対して高い触媒活性を示し、WO3 光触媒上における酸素生成速度を劇的に向上させることを見出すとともに、非加熱の担持法であることから、熱的に不安定な各種の光触媒材料の活性向上に有効な手段であることを明らかにした。本成果は学術雑誌ACS Catalysisに掲載された。
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